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Maya Myth

​マヤの神話

マヤ神話の中のカカオ

 

 

マヤにはたくさんの王国があり、地域ごとに少しずつ言い伝えが異なる上、

植民地時代に多くの文献を失ってしまいましたが、

残された書物や発掘物に共通するテーマを見出すことができます。

 

その代表的な例が、コーンの重要性です。

日本の主食であるお米が日本の祭祀において中心的な存在であるように、

マヤでは主食であるコーン(maize)がとても重要な存在です。

マヤの世界創世神話では、人間はコーンからできたとされています。

神様は最初は泥から人間を創ろうとしましたが、すぐに溶けてしまうため成功せず、

木から創った人間には心が宿らず、神様に祈ることができないので洪水を起こしてリセットしてしまい、

最後にコーンから創ったところ、神様を祀り、作物を育てることのできる心ある人間ができました。

 

コーンの神様は、マヤの季節のサイクルや生と死のサイクルの象徴として、重要な役割を担っています。

神話の中で、コーンの神様は供儀され、地底に埋められてしまいますが、そこからフルーツや新しいコーンなど、たくさんの植物が生えてきたと伝えられています。

それゆえ、あらゆる作物はコーンの神様に由来する神聖な植物なのですが、

その中でもカカオは一番最初に生えてきた特別な植物とされています。

上の絵は、西暦250から550年ごろの時代の石器に描かれているもので、コーンの神様が埋められている

マヤのピラミッドに3本の木が生えていて、その中心の木にカカオの実がなっています。

 

他にも、コーンの神様とカカオが描かれている石器が複数見つかっています。

下の絵は、グアテマラの壺に描かれていた、コーンの神様の顔がカカオの実になっている絵です。

ちなみに、マヤの言葉では、フルーツという言葉と顔という言葉が同じだそうです。

17世紀にメキシコで編纂された神話文献には、こんな記述もあります。

「コーンの神様は、ご自身を地面の下に埋めました。そして、神様の髪からコットンが、

目からとても美味しいカカオが、鼻からチアシードが、指からサツマイモが、

爪からは新しいタイプのコーンが出てきました。他の身体の部分からも、

たくさんの種類のフルーツが出てきて、人々はそれらを集めて育てるようになりました。」

ところでこのお話、古事記とそっくりだと思いませんか?

日本神話では、大宜津比売の頭から蚕、目から米、耳から粟、鼻から小豆、陰部から麦、

お尻から大豆が生まれ、他の神様がそれらを集めて育て始めました。

 

 

もう一つ貴重な神話文献に、グアテマラで残された『ポポル・ヴフ(Popol Vuh)』という

書物があります。そこでは、フン・フナプー(Jun Junajpu)という神様が

コーンの神様であると考えられています。

フン・フナプーは、地下の冥界の神様に騙されて、供儀されてしまいます。

フン・フナプーには、フナプー(Junajpu)とイシュバランケ(Ixb’alanke)という

双子の子供がいました。この双子は、生まれた時から親戚に良くされず苦労しますが、

知恵と強さで理不尽な試練を乗り越えるヒーロー的な存在です。

そんな双子もある日、お父さんと同じように冥界の神様におびき寄せられますが、

そこでも知恵を使って冥界の神様を倒します。

そして、雷の神様が大きな雷を落とし、地面を裂き、そこから木が生えて、天まで伸び、

その後生まれる人間が食べることになる、カカオやありとあらゆる植物が育ちました。

フナプーとイシュバランケも天まで昇り、太陽と月になりました。

コーンの神様が冥界で眠ったままでは地上で植物が育つことはなかったので、

フナプーとイシュバランケ、そして雷の神様が、植物の種を救ったと捉えることもできます。

 

フナプーとイシュバランケは実は、冥界の神様のリーダーが自分たちのことを殺したいのだ

ということはわかっていたため、冥界にいた賢い神様にお願いして、

彼らの身が焼かれたら骨を石臼で擦って粉にして、川に流してもらうことにしました。

冥界の神様がその通りにすると、フナプーとイシュバランケは川の中で復活することができました。

 

この、焼いて、石臼で粉にして、水に溶かす、というプロセスがカカオの加工プロセスに似ているため、Sky Highで販売しているグアテマラのセレモニアルカカオは、この双子の兄弟の片方、

フナプー(Junajpu)の名前を付けられたそうです。

 

ぜひ神話との繋がりを感じながら Cacao Junajpu をいただきましょう。

 

 

 

 

この記事の参考文献:

Cameron L. McNeil (ed.) (2009). Chocolate in Mesoamerica

: A cultural history of cacao. University Press of Florida.

 

A・レシーノス (原訳) (2016)『マヤ神話 ポポル・ヴフ』中公文庫.

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